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気ままに【らき☆すた】【けいおん!】【GA 芸術科アートデザインクラス】の自作小説を書いてます。同人的要素、百合的要素を含みます。苦手な方、嫌悪感を抱く方は見ないことをお勧めします。この中にある小説のいくつかは らき☆すたエロパロスレ または らき☆すた つかさ×こなたに萌えるスレに投下した作品です。
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らき☆すた小説205『出来るのならば最低限の愛情を』
みなみ→こなた

NO196『出来るのならば最上級の断罪を』の続きです
病みというか臆病者というか







最初はお母さん。次にみゆきさん、ゆたか。
教室に入っても田村さんとパティさんに同じ事を言われた。
そして放課後、一緒に帰ろうとゆたかに誘われたけど断わり
何となく昨日と同じ保健室近くの廊下ででぼんやりと黄昏ていたら、
なぜか一人でそこにやって来た泉先輩にも言われた。

「みなみちゃん、具合悪いの?」

そんなに今日の私は顔色が悪いんだろうか。
私にとっては具合が悪いつもりもないのに、
他人に連続で言われると本当に体調が悪いのではないかと思い込んでしまう。
だけど頭も痛くなければ喉も痛くない。熱もない。

「いたって健康です」
「……そっか。それならいいんだけど」

先輩は壁に寄りかかっている私の隣に移動して、同じように壁に寄りかかる。
この人は何をしに来たんだろうか。昨日はかがみ先輩から逃げているという理由があった。
なら、今日はなぜだろう。
聞きたいのにどう聞いていいものか迷い、結局口を閉じて生徒が行き交う廊下を眺める。
隣の先輩を見下ろしても俯いているので表情が見えず、
飛び跳ねた髪の毛が多少揺れるのが確認できるだけだった。
廊下を通る生徒の数が少なくなり、遠い部活動の掛け声と足音、ドアの開閉音だけが聞こえる。
閉じられている窓の向こうは寒いだろう。
どんどん廊下が暗くなっている辺り、日も落ちかけていると思う。

「みなみちゃん、は」

無言に耐え切れなくなったのか先輩が私を見上げた。
すぐに視線がかち合い、私はずっと先輩を見つ続けていたんだと気づいた。
完全に無意識だった。……あぁ、重症だ。

「みなみちゃんは何でここに?」
「……何となくです」

事実を述べると先輩はかすかに首を傾げたけど、
納得できる点でもあったのか数度頷いて再び俯いた。
視線が外された事に言い様のない身勝手な苛立ちと悲しみを感じる。
そんな自分自身にも苛立ちと悲しみを覚えた。

「先輩はなぜここに?」

感情を隠して同じ質問を返す。
今度は視線を合わす事がないように先輩とは逆の方を向いた。

「何となく……ここにみなみちゃんがいる気がしたんだよ」

アハハと、わざと笑いを含ませて言われたセリフに一瞬他の雑音が飛んだ。
壁に寄りかかっておらず、歩いている途中だったならこけそうになるほど動揺しただろう。
折角逆方向を向いていたのに思わず先輩の方へ首を向けると、
「ビンゴだったね」と笑いながら私を見上げる先輩がいた。


夕暮れ時。オレンジのフィルムが貼られたような白い廊下と壁。
そこに私と先輩がいる。二人だけで。


部活動の声も聞こえない。終わったのだろうか、それとも休憩中だろうか。
いや、そんなのはどうでもいい。今ここには誰もいない。それだけが、頭の中にあった。

「何で私に会いに来たんですか?」
「……昨日の事、気になったから。心配になって」

本当に心配すべきは自分の身の安全ですよ、先輩。
私を気遣っている場合じゃないんです。
警告したじゃないですか。酷い事をする前に嫌ってくれって。
私が先輩の優しさに甘える前に。

「―― 先輩は、私の事好きですか?」

甘えてつけ込む前に、どうか警戒してください。嫌ってください。
それが私の望みだと言ったはずです。

「え? 好きだよ」

泉先輩の言う『好き』は、先輩後輩としての『好き』だと分かっている。
私が望む言葉と同一のものではないと、理解はしている。
ただ、響きが一緒だから。

「そう、ですか」

全て言い訳でしかない。分かっているけど、頭は働かなかった。
壁から離れ、まだ寄りかかったままの先輩の肩を掴む。
ゆっくりとした動作でしたにも関わらず、先輩は不思議そうに私を見上げるだけで。
逃げてくれという苛立ちと、触れているという愛しさで、無性に細い首を締めたくなった。
見下ろされて先輩がやっと逃げようと辺りを見回したが、
助けてくれる人はおらず、私を振り払って逃げようともしない。

「……逃げるなら、もっとちゃんと逃げてください」

壁際に追い詰められている泉先輩は、訳が分からないといった感じで首を横に振る。
やっと警戒してくれたと思ったけど、警戒のレベルは笑えるほど低い。
先輩の肩を掴んで壁に押し付ければあっという間に逃げ場を塞げる。
お願いですからもっと鎧を着込んでください。
そんな、防御しているのかどうなのか分からないような薄っぺらい盾に隠れないで。
ただ私と目を合わせないだけの、オブラートよりも透明で薄い盾なんてすぐに破けるんです。
肩から片手を離して、緊張で汗ばんだ手を伸ばすだけで……ほら、簡単に触れられるんです。

「み、みなみちゃん……?」

頬、額、瞼、眉間、鼻、黒子、顎、首筋。
一カ所一カ所確かめるよう順に指でなぞる。
先輩の首は細くて、噛み付きたくなった。
そんな私の思考を読み取ったのかと思う程に同じタイミングで、
先輩がぶら下がっている手を握りしめる。
なのに私を突き飛ばしたりしない。罵声も浴びせない。

「……どうして抵抗しないんですか。私が何をしようとしてるのか、分からないんですか?」

先輩は格闘技経験者なんでしょう?
だったら肩を掴んでいるだけの拘束なんてすぐに抜け出せるはずじゃないですか。
首筋に触れている私の手を簡単に捻る事だって出来るはずです。
突き放して嫌ってくれれば、指から伝わる熱に浮されている私の頭も少しは冷めるはずなのに。

「……みなみちゃん、苦しそうだから。刺激しない方がいいかな……って」

苦しそうな表情をしているつもりなんてない。いつもと同じ表情だ。
もしかしたらいつも苦しそうな表情をしているのかもしれない。

「その結果、先輩自身が苦しんでも……いいんですか?」
「……みなみちゃんなら、そこまで酷い事しないと思ってるよ」

先輩は誤魔化すような、曖昧な笑みを浮かべた。
根拠はなんですか。
なぜこの状況で笑えるんですか。

「先輩は私の何が分かるんですか……?」

酷い事をしない?
私の思考を知らないからそんな事が言えるだけ。
知っていたら逃げるに決まってる。
私に近づくはずがない。
自分を狙っている指名手配犯に親しく話しかけるほど先輩はバカじゃないはずだ。

「みなみちゃんだって……そんなに詳しく私を知らないじゃん」
「ええ。間違いなく、かがみ先輩やゆたかの方が先輩の事を知っていますね」

だから、みんなが知っている泉先輩じゃなくて。

「私はみんなが知らない先輩を知りたいんです。
 私が酷い事をしたら先輩はどんな声で泣いて、鳴いてくれますか?」

こんな事を言っても先輩は逃げない。
私が言った事を租借するようにじっと私を見上げ、手を握り締め、逃げずに立っている。

「逃げてくださいよ」
「……みなみちゃんは、私に逃げてほしいの?」

なぜ選択肢を私に与えるのだろうか。
逃げてほしくないと心が叫んでいる。
意味合いは違えども『好き』の言葉は貰ったから行動したっていいはずだと心が囁く。


……違う。これは違う。
本当にしたい事じゃない。
逃げない先輩に、小さな先輩に、三度目の抱擁をする。
やっぱり先輩は逃げない。でも、受け入れてくれているわけじゃない。
いっそ嫌ってほしい。存在を忘れてほしい。
すれ違っても会釈をしないほどの存在になりたい。

「……さよならをください」

嫌ってくれと、私が叫ぶ。
取り返しがつかない事になる前に、私から離れてほしい。

「……本当に、それでいいの?」

私が望んだら先輩は叶えてくれるんですか?
それなら、嫌ってください。
さよならの言葉をください。

 

嘘、です。
違う、違うんです。
私の心の底は、ずっと叫んでたんです。
浮き上がってすらこれない程の底に、無様に張り付いていたんです。

 

今更ながら、先輩の心音も私と同じように速い事に気付いた。
先輩も冷静なんかじゃない。
それが分かったって、同じく冷静じゃない私は何も出来なかった。
私の心の底の願いは。
本当の願いは。

『かがみ先輩やゆたかの……十分の一、百分の一でもいい。私を好きになってください』

あまりにも恰好悪い告白だ。
好きになってください、なんて。
結局、私は先輩が好きで、それと同じように先輩からも好いてほしかった。
一番の、根底にある願いはこれだ。

でも、言えなくて。
抱きしめて抱きしめて、先輩がら「苦しい」と言われるまで抱きしめて。
私自身も呼吸が苦しくなってようやく腕の力を抜いた。
泉先輩が深呼吸して、何かを促すような視線で私を見上げて視線で射抜いてくる。
何を言えばいい。私の本当の願いなんて言えないのに。
私はそれを願えない。そんな価値なんてない。

「……忘れてください、今私がした事、全部」

こんな建前の愚かで身勝手な願いは口に出せるのに、本当の愚かで身勝手な願いは紡げない。
先輩が何か言いたそうに口を噛んで、俯いた。

泉先輩。泉こなた。私の、好きな人。

窓の外の沈みかけのオレンジを見た。先の望めない色だと感じた。
そのまま視線を上へやって低い天井を見上げる。
いくら見つめても天井は天井で、空は見えない。
どんなに見つめても、空から安らぎは落ちてこないという当たり前の事を、私は知った。

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