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気ままに【らき☆すた】【けいおん!】【GA 芸術科アートデザインクラス】の自作小説を書いてます。同人的要素、百合的要素を含みます。苦手な方、嫌悪感を抱く方は見ないことをお勧めします。この中にある小説のいくつかは らき☆すたエロパロスレ または らき☆すた つかさ×こなたに萌えるスレに投下した作品です。
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らき☆すた小説04『認識できない感情』
前作の続き かがみ視点




いろいろありすぎた日だった。というより、いろいろな事を起こしすぎた日だった。
こなたに告白した私も確かに私なのだけれど、
どこか紙一枚隔てた違う世界の私のような気すらする。
家の玄関を開けて「ただいま」と言葉を発して、ようやく私は現実世界に戻ってきた気がした。

テレビを見ているつかさに声をかけ、宿題するからと部屋に向かう。
いつもならすぐに机に向かうところだけど今日ばかりはまともに問題を解ける自信がない。
ベッドに倒れこもうとしたら急に足の力が抜けて膝を付いた。
そのままゆっくり上半身をベッドに投げ出す。
よほど緊張していたのか、その瞬間に眠気が襲ってきた。
家について安心したという理由もあるかもしれない。
目を閉じる。網膜に焼き付いているさっきの光景が意識せずに瞼に浮かぶ。
その中でも鮮明に浮かぶ、こなたの泣き顔。
最初に左目から一筋流れて、その後の嗚咽に続いて右目からもボロボロと。

 

 

触れたいと―――抱きしめたいと、願った。
泣かせた張本人である私にはその資格はないにも関わらず、そう望んだ。

 


『かがみの事は普通に好きだよ。でもそれは友達としてで、
 つかさやみゆきさんに感じる『好き』と一緒だから』
『……だから、恋愛感情でかがみを好きになれない』

 


心に刻みこまれた声が脳内を反響する。
こなたの声なのに、いや、こなたの声だからこそ、苦しい。
三半規管がおかしい。ベッドに寝ているはずなのに平衡感覚が定まらない。
ベッドが縦に回転しているような、まるで粘土のようにグネグネと蠢く。
体が重くなり、ベッドに沈んでいく。歪んで軋む世界が遠い存在に思える。
そして、フッと意識は中断した。

 

気がつくと私はア○メイトの目の前にいた。
さっき居た店舗の目の前で、私はほんの数センチ地面から浮いていた。
……ああ、夢だ。
店の壁に触れようとしたら、そこに手ごたえはなく壁の中に手が吸い込まれていった。
夢だしなんでもありねと思い、移動する。
浮いているから足を動かさずとも思っただけで勝手に移動した。
浮くなら浮くでもっと浮けばいいのに何でこんな超低空飛行、しかも直立?
と夢の中にまで突っ込みを入れる。
入り口から誰か出てきた。見間違うはずもない。
遠目からでも目立つ小柄な青の長髪。ぴょんと飛び跳ねたアホ毛。その隣には『私』が居た。
そもそも浮いているから足音を忍ばせる必要もないけれど、ゆっくりと私は『私』達に近づく。
『私』が止まって、歩調がずれて半歩先を歩くこなたが振り向く。

あれ、さっきと若干違う?
まぁ夢だし、ビデオを見ているわけじゃないから完全に一致してなくてもいいけれど。

『こなたは……私の事嫌い?』

私の声ってこんなんだっけ?
自分が認識している声と他人に聞こえている声は違うというけど。
それだけじゃなく、緊張が含まれた自分の声に思わず恥ずかしさがこみ上げる。

『私は今まで通りがいいんだ』

こなたが『私』に対して呟く。
丁度『私』の後ろに私がいるから『私』の表情は見えない。
正直自分の告白している時の表情なんて見たくない。怖い顔してるのがオチだし。

『ねぇかがみ。今まで通りじゃダメ?』

悪戯っぽく笑いながら『私』を見上げるこなた。
夢は欲望が反映するとはいうけど、私こういうこなたを望んでるっけ?
現実的な考えは「夢だし矛盾してるのが当然か」という夢特有の意識でかき消された。

『…今まで通りでいい』

『私』が頷く。
こなたはほんの少し『私』に近づく。
今更気づいたけど、この夢の世界には通行人がいない。
物凄く静かな人が居ない世界。現実ではありえない。

『本当に今まで通りでいいと思ってる?』

こなたの視線が、こっちを向いた気がした。
私に聞かれている?
ここは現実のこなたがいない。それにどうせ夢だ。正直になろう。

 

私はこなたの隣にいられればいい

 

さっき、私はそう言った。それは100%本当と言うわけじゃない。
『今まで通り』で我慢が出来なくなって告白したのも確か。
触れたいと願った。抱きしめたいと望んだ。……贅沢言うなら、キスとかもしたい。
でも、願って望んで、それで『今』が無くなるのなら私の願望は殺す。
いくら殺したって決してその願望は死にはしない。
死にはしないけど我慢は出来るはず。


だから友達でいい。名前を呼び合えて、たまに頭を撫でたりするぐらいで。
隣を歩けるだけでいい。

 

『じゃあ、もし私が誘ったら?』
「――は?」

あまりにも突拍子もないこなたのセリフに思わずマヌケな声を出した。
でもこの夢の世界に私は干渉できないらしい。
目の前にいる『私』は私のマヌケ声がまったく聞こえていないようだった。
しかも『私』は私よりもある種冷静、というか自分に正直らしい。

『例えばどんな風に?』
「おいぃ!?」

アホな『私』の切り替えしに流石に止めようと手を伸ばしてもあっさりとすり抜けるだけだった。
どうしようも出来ないもどかしさと恥ずかしさで頭を抱える。
『私』の問い掛けにこなたは妖艶な表情で両手を伸ばして『私』の両頬に触れた。

 

 

『例えば―――キスして、とか』

 


現実じゃないとは言え、こなたの声でそういうセリフを聞いて私も眩暈がした。
グラリとした頭をしっかりと抱える。
というよりなんつー夢を見てるんだ私は。欲求不満か!
あながち間違ってもなさそうで怖いしと分析している間にも
『私』は操られるかのように、こなたの長髪ごと腰に手を回し引き寄せた。
何が悲しくて自分自身と好きな人(しかもさっき振られた人)の
ラブシーンを見せ付けられなきゃいけないのだ。
……私自身の夢だから、責任は全部私にあるのだけど。

「あ、あんた達ね……」

こなたは目を開いたまま『私』は目を閉じて顔を近づけていて。
私は息を吸ってこの夢から覚めるために叫ぼうとして。
気づかなかったけど、いつの間にか空に亀裂が入っていた。
そして、暗転。

 

 


「何やってんだあぁ!!」
「うひゃぃっ!!」

私の叫びに、いちゃつこうとしていた二人は消えて……って、あれ?
『私』ともこなたとも違う叫びに私は急いで立ち上がった。
……視界に入るのは、本に、ベッドに、机。私の部屋だ。
あ、そうだ。さっきまでのは夢だった。
ぼんやりとしている頭を数回振って辺りを見回す。
部屋のドアを半開きにしてつかさが中を覗いていた。

「あー、ごめんねつかさ。何か寝ぼけてて」
「ご、ごめんねお姉ちゃん。いきなりドア開けて……怒ってる?」
「いや、さっきの叫びはつかさに言ったんじゃないから」

説明できない叫びの矛先はひとまず置いておく。

「で、どうしたのつかさ」
「お姉ちゃん宿題するって言ってたから、甘いものほしいかなって思って」

市販のお菓子をわざわざ持ってきてくれたらしい。
差し出されたお菓子を受け取る。少し糖分を補充した方がいいかもしれない。

「ありがとう、つかさ」
「でもすぐに晩御飯出来るからお菓子食べ過ぎると入らなくなるかも…」
「え、もうそんな時間!?」

時計を見ると、帰ってきた時間からはかなり経過していた。
持ってきてくれたつかさには悪いけど今は食べるのは止めておこう。
お菓子の箱をつかさに渡した瞬間に、お母さんのご飯が出来たという声が聞こえた。

夕食も風呂もいつものように、ただ若干早く終えた私は眠くもないのにベッドに横たわった。
目が冴えてしまっている。さっき微妙な時間に寝たからか、未だに緊張が持続しているのか。
小説を読む気にもなれなかった。そういえば欲しい小説あったっけ。
今度こなたとどっか出かけたときに買おうと思ってたけど……一緒に行けるかな。
明確に断られても、やっぱり考えるのはこなたの事で。
今まで通りを望むこなたには悪いけど、よほど好きなんだと尚の事自覚した。
眠くなくても目を瞑って明日を待つ。
会いたい、けど、どういう顔をすればいい?
いつも通りという事を意識してないから『いつも通り』なら、
演じようと意識した瞬間に『いつも通り』ではなくなってしまう。
思考が袋小路に詰まってショートする寸前に、私の意識は再び落ちた。

 

翌日。いつもの時間に起きて、つかさが少し遅れて起きる。
家を出て、駅でこなたを待つ。平常心が大切。いつも通りに。
なんだかんだでこなたは私に気を使いそうだし。
断ってごめんって思ってるかもしれない。そんな必要はないのに。
むしろ困らせて、苦しませてごめんと何度でも謝らなきゃいけないのは私の方だから。
考えがグルグルと、尻尾を追いかける犬のように回る。考えすぎて熱い。というより事実暑い。
つかさが小さく声を上げる。日陰からひょっこりと顔を出したのは私が考えていた人物で。
おはよう、と声をかけようとした瞬間。

 

 


『例えば―――キスして、とか』

 

 

昨日のアホな夢がフラッシュバックした。
何とか声を上げるのは堪えたけど、ばれてないだろうか。
どうした私。むしろいつもより暴走してないか?
こなたを見ていたらその次のシーンまで思い出しそうで、慌てて視線を時計にやった。
いつもより早い。
少し冷静になろう。頭をどこかにぶつけたい。瓦五枚を頭突きで割りたい。
って、こんな事を思う事自体冷静じゃない証拠だ。

「おはよう、こなちゃん。今日はいつもより早いね」
「おはよう。珍しいじゃない」
「おはよー、つかさにかがみ。
 私もたまには清々しい朝の貴重な時間を大切にしようと思うときがあるのだよ」
「わー、えらいねこなちゃん」

つかさの反応にこなたは「え」と困ったような表情をする。
その困った表情の原因は昨日の出来事も少なからず関係しているのだろう。
でも今その事は言えずに「それが毎日続けばいいんだけどねー」なんて軽口を叩く。

 

いつも通りに。今まで通りに。

 

電車を降りてバスに乗ると、こなたはすぐにゆらゆらと揺れだした。
あまり寝れなかったのかもしれない。原因は……私? と思うのは自意識過剰すぎるだろうか。
ネットでゲームとかしている可能性だってある。聞けないから解らない。
心配しても、普段そういう風に訊ねないからいきなり訊ねるのも不思議に思うかもしれない。
ゆらゆらと揺れるこなたを見つめる。視線に気づいたのかこなたはこっちを向いた。
隣にいるつかさと、私とを交互に見る。

「こ、こなちゃん。やっぱりこなちゃんは早起きにむいてないよ…」
「……ソウダネ」
「むいてるむいてないの問題じゃなくて気持ちの問題よ。
 そんなんじゃ受験とかで早起きしてもきついだけじゃない。
 少しは早寝早起きの習慣つけたほうがいいって」
「いや、それはほら。分かっちゃいるけど止められない…みたいな? 分かんないかなー?」

結構すんなりと会話のキャッチボールが出来てほっとした。
露骨に安堵の息はつけないので目を閉じて。

「分からん」

いつものように呟いて、変にボロを出さないために私は口をつぐんだ。
学校に着くまで私もつかさもこなたも喋らなかった。
バスの揺れを感じても、当然のように人生の意味は分からない。
とある歌を思い出し、運命の人は誰だろうかと私は片目を開けてこなたを見た。
間に挟まっているつかさは眠いのか目を閉じていて。
こなたもてっきり目を閉じていると思えば、
予想に反して妙にぼんやりとした瞳で前のシートを見つめていた。


やっぱり、私はこなたを苦しめている。
ずしりと肩に乗る重さは、昨日の後先考えてない私に対する嫌悪と、
今の私の無力に対する憎悪だろう。


急にバスが止まった。もう学校に着いたらしい。
バスを降りて教室へと向かう。
結局3年間クラスが同じになる事はなかったから、絶対に廊下で別れる。
「んじゃまたね、かがみ」と、こなたが手を振ってくれた。

「おー、昼休みね」
「うん」

つかさとこなたに手を振って教室に入る。
そう言えば今「昼休みにね」と言ってしまった。
授業の合間に行こうと思えば行けるけど……そう言ってしまった手前、何となく行きづらい。
HRが終わり、授業が始まる。いつもより機械的にノートを取るだけの授業。
窓は開いているけれど、風がやむと熱い空気が教室の中をゆっくりと漂い肌に纏わり付く。
窓側の席はいいなぁと視線をやった。
峰岸が黒板を見つめていた。そういえば峰岸って彼氏持ちだ。
相談してみようかなと考えていると授業終了のチャイムがなった。
慌てて黒板に視線を戻す。ノートに書いていた途中の文章は消されて新たな文章が書かれていた。
相談してみるのと同時にノートも借りよう。

「峰岸」
「なに、柊ちゃん? 珍しいね」

席から立ち上がって峰岸の近くへと移動する。
窓際に近いとは言え結局暑いことに変わりなかった。
相談しようと口を開いて、いや待てと口を閉じる。
っていうか、私はそもそも何を相談しようとしてたのか?

「えっと……峰岸って彼氏いるでしょ?どうやって付き合ったの?」
「えぇ!?」

峰岸が発火した。
……物凄く聞き方を間違った気がする。
それにこれを聞いてどうしようというのか。惚気話を聞く羽目になりそうだ。

「ごめん、今の無しで」
「ど……どうしたの、柊ちゃん?」

苦笑しつつ困ったように首を傾げて訊ねられた。正直私も何が言いたいのか解らない。
聞いてどうしようと言うのだろう。
参考にしようと思ったところで無理な事は確定しているのに。

「ちょっと聞きたいんだけど、いい?」
「突拍子もないことじゃなければ……」

あれ、もしかして警戒されてる?
それに突拍子もない事なので、頷きもせず会話を進める。

「例えば告白して、相手から『友達としてしか見れない』って言われた後って……
 付き合える可能性あると思う?」
「……何の話?」
「いや、ちょっと……昨日読んだ小説にそういうシーンがあってね。
 主人公が告白して振られるんだけど結局諦められないの」

流石に「実体験です」とは言えない。しかも女同士なんてとても言えない。

「可能性は……0じゃあないと思うけど」
「え、何で!?」

思わず峰岸の机に手をついて迫る。
「柊ちゃん、その小説に感情移入しすぎ…」と聞こえた。
そりゃ感情移入も何も、その感情の持ち主は私です。

「ほら、普通に友達と思ってた人から告白されて、
 断ったけどそれから急にその人の事が気になったりってあるから」
「……あるの?」
「ない事はないと思う」

でも……やっぱりそれって男と女の一般論だし。
はぁ、とため息を付く。
こんな事を考えたって付き合えるはずもないし、こなたに迷惑なだけなのに。

「柊ー、あやのー、なに話てんの?」
「あ、みさちゃん」

急に背中に軽い衝撃。日下部が挨拶代わりに叩いてきたんだろう。
にゃはーと笑うその表情が無性に羨ましい。

「日下部、いつの間に?」
「さっきまで寝てたんだよね、ってわけであやの、ノート貸して!」
「そうだ、峰岸。私も貸して」

いつもなら「しっかりしろよ」と言うところだけど今日ばかりは言えない。
私の頼みに日下部と、峰岸まで驚いていた。

 

それ以降の授業では黒板を写し損ねる事はなく昼休みになった。
弁当をもって隣のクラスへ。久しぶりな気がする。朝会ったのに。
みゆきの弁当は相変わらず豪華だし、今日の弁当当番はつかさだから華やか。
こなたは毎度のごとくチョココロネ。
ネコ口がコロネの細い方に噛み付いて、太い方からすでに溶けてきているチョコが押し出された。

「こなちゃんって、ゆきちゃんに食べ方教えてもらっても細い方から食べるの変わらないんだね。
 って、チョコが垂れてるよ!」
「大丈夫だよつかさ。慌てない慌てない」

徐々に長さを伸ばすチョコレートを舐め取る。
チロチロと動く赤い舌を扇情的に感じてしまい、箸を止めて見入ってしまった。
やばい、重症だ私。
視線を感じたのか、こなたはこっちを見て若干の間の後。

「そだ、今日帰りにゲ○ズ寄ろうと思ってるんだけどかがみも一緒に行く?」
「へ?」

そういう事を言われると全く思っていなくて何の心構えもしてなかった私は
我ながら情けないほどマヌケな声をもらした。
「早く返事をしないと」という意識は、
こなたの右頬にチョコが付いてることに気づいて
「拭いてあげたい」という願望によって処理が遅れた。
今ここで頬に触れたら、きっと拭く以上の事もしてしまいそうで
動き出した右腕を咄嗟に理性で抑え込む。
それより、返事をしないと。
一緒に行こうと誘ってくれた。嬉しい。本も買いたいのがあるし。
でも……私は今まで通りでいいと言いながらも、実際は好きという気持ちを殺せていない。
二人でどこかへ行って、昨日と同じように何のきっかけでスイッチが入るか解らない。
もしいきなり抱きしめでもしたら、友達としてもやっていけなくなる。
こなたをますます苦しめる。

「えっと、今日は止めとくわ」

どれぐらいの時間考え込んでいたかは解らないけど、早口で断りを入れた。
こなたはきょとんとした顔をして……
その後リアクションも何もなくチョココロネを見つめていた。
……どんな気持ちで私を誘ってくれたのかは解らない。
でも、私は断ってしまった。傷つけてしまった?
何が最善の選択肢なのか解らない。
私はつかさが作ってくれた弁当を見つめる。


「泉さん? 大丈夫ですか?」

みゆきの声。
こなたの返事はない。
私もこなたの様子を確認しようと顔をあげた。

「泉さん?」
「あ……うん、ちょっとチョコが思った以上に手ごわくて」

机に垂れる数秒前のチョコを舐め取って、笑っていた。
すごく無理をしているように見えて、思わず名前を呼ぼうとして。

「あの、こなちゃん。さっきから言おう言おうと思ってたんだけど」
「ん、何?」
「ほっぺたにチョコが付いてるよ」

つかさに先を越された。
あ、そういえばチョコの事言ってなかった。
こなたも初めて気づいたみたいで頬のチョコを指で拭って驚いている。
その指にコーティングされたチョコを、さっきと同じく舐め取って。
赤い舌を、どうしても落ち着いて見れない。舐めるって行為は健全じゃないって。絶対。

「ごめん、ちょっと洗ってくるよ」
「分かりました」
「左側にも少し付いてるよ」
「……行って来い」

頬と指とを洗いに行ったのだろうけど、舌に気を取られていて返事が少し遅れてしまった。
あぁ、非常に危ない私の脳。告白してから理性のガードがゆるくなってる気がする。
振られたんだから落ち着けよ私の願望。
箸で卵焼きを突きながら、つかさは料理が上手だなぁと思ってしまう。
形も綺麗だし、おいしいし。やっぱり家事は出来たほうがいいだろうし。

「……お姉ちゃん?食欲ないの?」
「え、あ、いや。そうじゃなくて」
「さっぱりしたもの、オレンジなどがありますが食べますか?」

みゆきまで心配そうに私を見ている。
断るのも何だか気が引けて、オレンジを一つ貰った。
一口サイズに切られて、口の中で甘みと少しの酸味がはじける。

「ねぇねぇ、ゆきちゃん。私も貰っていい?」
「はい、どうぞ」

差し出されたオレンジを箸で摘んで口に運ぶつかさ。
それを笑顔で見つめるみゆき。
まるで親鳥と雛鳥だ。

「……こなちゃん、遅いね」
「そうですね」

確かに、頬と手を洗うだけにしては遅すぎる。
もしかして……私がいるからここに居づらいんじゃ……

「私、様子見てくるね」

つかさが立ち上がろうとして、私はそれより早く立ち上がった。

「つかさは座ってて。私が行くから」
「え、う……うん」

こなたが気を使う必要はない。
謝ろう。謝って昨日の事を忘れてもらうのが一番いい。
自分が言ったくせに、なんて臆病でずるい逃げの手だろうと思う。

 

廊下の、鏡が取り付けられていない手洗い場にこなたは居た。
水がずっと流れているけど手は洗っていないように見える。
洗った後に出しっぱなしで考えごとだろうか。

「こなた」

声がかけづらくて、小さく呼びかける。
反応はない。無視……ってわけじゃなさそうだけど。

「こなた」

今度は少し大きく。
やっぱり反応はない。肩をちょっとだけ叩こうかなとしたら、
こなたはいきなり蛇口を閉じてこっちを向いて

「どひゃあああ!!!!」
「な、何よ!!!」

叫ばれた。その叫び声に私まで叫んでしまう。
叫んだ後も、私を見て妙に慌てているこなたに対し、罪悪感を感じる。
やっぱり、私といっしょに居づらいんだろうから。

「ど、どしたのかがみ」
「あんたが帰ってくるのが遅いから見に来たのよ。……気になったし。
 昨日の事気にしてるなら、本当にごめん。忘れていいから」
「え?」

こなたが「何言ってるの?」との意味を込めたのだろう一文字が冷たかった。
悪いと思っているのに、私は自分勝手な事をお願いする。
なるべく笑顔を作って。

「だから今まで通り」
「出来ないよ」

普通に話してくれたら嬉しい。
そう繋げようとしたのに、こなたにセリフをぶった切られた。
見上げる視線が真っ直ぐすぎて、動けなくなる。

「かがみは私に真剣に告白してくれた。
 それをなかった事にするなんてかがみに失礼だよ。忘れるなんてもってのほか」

こなたは、私以上に私の事を考えてくれていた。
気温の関係だけじゃなく、胸が熱い。

「昨日、私はかがみの事を『友達として好きだから恋愛感情で好きになれない』って言ったよね。訂正する」

周りの空気が変わったように感じた。
こなたが両手を強く握り締めて、訴えかけるような瞳で私を射抜く。

「私はいまいち『恋愛感情』って感情が分からない。
 だから……自分の中で答えを見つけたいから、かがみに一つお願いがあるんだ」
「…何?」
「かがみにとって残酷なお願いかもしれないよ」
「出来る限りならきいてあげるわよ」


こんなに真剣に考えてくれて、心配までしてくれているなら。
出来る限りどころか、どんな不可能にも挑戦しようと思っていた。
こなたが息を吸う。私も、どんな無茶だろうが頷く用意をして

 


―――――キスして

 


『え?』

 

昨日見た夢と同じ単語を聞くとは思っていなかった私は頷くより先に、
なぜかこなたも発した一文字をハモらせていた。

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